moon

COLUMN

カテゴリ:

デザインのはなし 01:アフォーダンス

ものや環境には、向いている機能と向いていない機能とがある。丸いタイヤは四角いタイヤよりも転がるのに向いている。したがって丸いタイヤのほうがより回転するためのアフォーダンスをもつ、と言える。また、フェンスよりも階段のほうが登るのに適している。したがって階段のほうがより登るためのアフォーダンスをもつ、といえる。とはいえ、四角いタイヤは転がることはできず、フェンスは登ることができない、というのではない。むしろ丸いタイヤやフェンスの形状がそれぞれの機能に影響を及ぼし、しかるべく使われる可能性が高い、ということである。
ー書籍 デザイン、「新・100の法則」より

つまりアフォーダンスとは、もの、あるいは環境の物理的特徴が、その機能に影響を与える属性のことである。

例えばフォークとスプーン。
フォークは物を刺すのに適した形をしており、スプーンはものを掬うのに適した形をしている。
今まで箸しか使ったことがない人がものを食べる場面で箸ではなくナイフとフォークを出されたとしても、恐らく使い方を理解し使用することができるだろう。

例えばセグウェイ。
足を乗せる台はへこみ、ハンドルには角度がついている。
なるほど、これなら使用者は乗る位置、方向を間違うことがない。

デザインを考える過程において、アフォーダンスは第一に考慮されるべき考えである。
意図した機能、使用の仕方にアフォーダンスが一致するようにデザインすることで、ユーザビリティは改善し、デザインはより良いものになるだろう。

では、アフォーダンスを最大限に引き出すためにはどういったことを考えればいいのだろうか。
そのヒントは、人間の「無意識」にあると言えるだろう。
人は無意識のときほど、周りの環境に適応し最も無駄の少ない行動を取るからだ。

例えばこんな逸話がある。
深澤直人氏というプロダクトデザイナーは、傘立てをデザインしてくださいと言われたとき、玄関の壁のすぐ近くの床に直線的な溝を引き、そこに傘の先端を引っかけて壁に立てかけるという発想をした。
着想の元は、なんの気なしに溝に先端をひっかけて壁に立てかけられた傘。
この傘を立てかけた人は、とっさに傘を立てられる場所に傘を立てただけなのだろう。しかし深澤氏はこの無意識とも言える行動の結果に注目し、こういった「よくやる」ことには無意識ながら人間が環境から価値を汲み取っており、それがデザインのヒントになると発想したのだ。

ウェブサイトのデザインにおいても同じことが言える。
画面上に物理的なボタンを模したオブジェクトがあれば、人は無意識にそれをボタンだと認識して押すだろう。
文字の大きさは見出しと本文を区別する重要なファクターになるし、色はオブジェクトの機能と役割を区別する大きな目印になる。

アフォーダンスは、人の「無意識」を意識してもののカタチを考える、デザインの第一歩なのである。